かつての旅人や漁師は、この松林を目印に、海と陸を行き来していたのかもしれない。
江戸時代、海岸の飛砂を防ぎ、航路のしるべとするために人の手で松が植えられた。
長い時間をかけて根を張り、潮風を受けとめ、土地と暮らしを守ってきた。
影をつくり、風を和らげながら、自然と共に在ろうとする意思が、この林を育ててきたのだろう。
いま、松原には別の時間が流れている。
本を開く人、走る人、海で遊ぶ人。
それぞれがこの場所を思い思いに楽しんでいる。
先人たちは、こんな未来を想像しながら松を植えたのだろうか。
変わらないのは、海のきらめきと松葉のざわめき。
その向こうに、見えない物語がいつまでも重なっている。