いつからか、「その話はやめておこう」が合言葉になった。
政治も、宗教も、野球すらも。
意見の違いよりも、空気の乱れを避けることが是とされる風潮ができた。
けれど、語らないことを続けた先に、
何を受け継がずにきてしまったのだろう。
かつて、祈ることも、政ごとも、暮らしのすぐそばにあった。
神社は海のそばにあり、まつりは町の時間をゆるやかに回していた。
祈りは、特別な行為ではなく、
自然のなかで暮らすための、ひとつの知恵だったのかもしれない。
海に向かって立つ鳥居。
漁に出る前に手を合わせ、
浜に戻れば、波とともに恵みに感謝を捧げる。
風景は、ただの背景ではなかった。
そこには暮らしがあり、信仰があり、語らいがあった。
風景は、人と自然とをつなぐ、静かな対話の舞台だったのかもしれない。