港町の朝は、早い。
まだ空が明るくなる前から、漁師が沖へ出ていく。
釣り人が、港のへりに静かに腰を下ろす。
エンジンの音、網を引く音、そして交わされる短いあいさつ。
一日の始まりを告げるそれらの音が、町を目覚めさせていく。
そんなにぎやかさが、夕暮れにはすっかり影をひそめる。
そう、とにかく静かなのである。
だからこそ、
この港町の静けさには、朝の記憶が潜んでいるような気がする。
光だけが、過ぎた時間をやさしく照らしていた。