遠くからでもひと目でわかる山がある。
かつては三つの峰をそびえさせていたその姿は、長い年月のあいだに削られ、今では独特な輪郭を残すのみ。けれども、その形こそが、この地の歴史を語っている。
この山は、古代から人々に「祈りの場所」として仰がれた。修験道や信仰の対象となり、歌や伝承にも登場する。やがて時代が移り変わると、豊かな石灰岩を求めて採掘が進み、山の姿は大きく変わっていった。人の営みと自然の姿が、ここほどはっきりと交錯している場所も珍しい。
いま、山の周囲には静かな集落が広がり、かつての賑わいを知る人々の記憶とともに、その削られた断面は力強く残っている。上空から眺めると、失われた峰の輪郭が想像でき、人と自然が織りなしてきた歴史の厚みを感じさせる。
削られてもなお、この山は人々にとって目印であり、祈りの対象であり続けている。