穏やかな水面が広がっている。
山に囲まれた、大きなひとつの湖のような風景。
けれど、この場所には、かつて人の暮らしがあった。
家があり、田畑があり、日々の生活が積み重なっていた土地。
ダムの建設によって、その風景は水の下へと移された。
地図からは消えた集落。
ただ、水の底に静かに残り続けている。
空から見ると、水面の輪郭や地形の名残がうっすらと浮かび上がる。
それは現在の風景でありながら、過去の痕跡でもある。
この場所は、県内でも最大規模のダムとして機能している。
洪水を抑え、水を蓄え、地域の生活を支えている存在。
かつて自然の流れに任されていた川は、
いまは制御され、安定した水として扱われている。
その変化の裏側には、
失われた風景と引き換えに得た安全や利便性がある。
水の上に広がる静けさと、
水の下に積み重なった時間。
ひとつの風景の中に、
ふたつの時間が重なっている。